2010年3月8日月曜日

疼痛ケアに関すること

「疼痛ケア受けたことない」が6割
(3月2日18時13分配信 医療介護CBニュースより抜粋引用)
********************************************************************************
 日本医療政策機構が実施した「がん患者意識調査」によると、
がんに関連する痛みや、がんの治療による痛みを和らげる治療(疼痛ケア)を
受けたことが「ない」と答えた人が59%と半数を超えた。
 治療方針の決定過程や、受けた治療について、
「どちらかといえば不満足」「不満足」とした理由を調査したところ、
上位を占めたのは「情報が少ない」「精神面に対するサポートが不十分」などで、
同機構では「診断や治療などの医療技術が徐々に進歩している一方で、
より質の高い療養生活を送る上で欠かすことができない部分に対する
不満が高いことが示された」としている。
**********************************************************************************
内容とタイトルがちょっとかみ合わない印象がありますが・・・

コメント欄を見ても「がんの特効薬を!」みたいな内容が並んでいますし。
「疼痛ケア」と言う概念自体がまだまだ理解されていないのでしょう。

しかして「受けたことない」が6割、と言う結果は驚きです。
もっともがんでも100%疼痛があるとも限らないので
疼痛がない人は「受けたことない」と回答するでしょう。
アンケートの質問設定と解析にちょっと疑問ありです。
「疼痛ケア」がどこまでの範囲を含んでいるかも曖昧ですし。

がんの「疼痛ケア」≒「モルヒネ製剤による除痛」と考えていいでしょう。
モルヒネ製剤以外にも使用する薬剤はあるのですが
いわゆる末期がんの疼痛にはやはりモルヒネ製剤しか効果が出ません。
このモルヒネ製剤も10年15年前と比べると本当に使いやすくなりました。
パッチ製剤なんかは3日に1回の張替えで血液濃度が維持できます。
ただ、導入の仕方にちょっとしたコツがいりますが
そんなに難しい事ではありません。
うまく導入すると劇的に効きます。

ただ、以前と変わらないのが「認識」です。
患者、そして医師双方の認識が不足している部分が大きいです。
医師でもモルヒネ製剤に関する知識不足、経験不足の人が多い。
だいたい、医師は「末期=死=敗北」と言う教育をなされているので
「末期=死」だと見切ると放棄する、逃げる習性があります。
その延長線に位置するモルヒネ製剤なんか
知る必要も使う必要もない、と言う感じでしょうか。

でも・・・頼むから「モルヒネなんて使うと中毒になる、寿命が縮む」と
患者および家族に言い放つのは止めてくれ・・・と思ったこともあります。
壮絶な疼痛で患者が転げまわっているのに
「モルヒネ使うのなんとなく怖いしどうしようもないし」
で放置している現場も見た事があります。
単なる自分の知識不足・誤解です。
自分ががんになって最後の最後まで苦痛を我慢させられたら
どうなのか、と言う想像力不足でもあります。

医療用のモルヒネ製剤で「中毒」は有り得ません。
患者に不必要な忍耐をさせるべきではありません。
使用方法が分からなければ薬剤師に相談して教えて貰うべきです。
モルヒネ製剤の形状、規格は進歩しつつ変化しています。
私も分からない面が多々あるので
かならず薬剤のプロと相談しつつ進めていきます。

患者側も以前と比べればやや受容の度合いが高まったかな・・・?
でも、本来、患者を啓蒙すべき医師のやり方に
はっきり言ってお粗末な部分が多いので
なかなかだと思います。

「麻薬」=「中毒」と言う短絡的な認識がある限り
「モルヒネによる疼痛ケア」の普及は難しい。
この図式には「麻薬」=「薬物乱用」=「中毒」と言う
もう一つのキーワード「薬物乱用」を含めて考えるべきなのですが
芸能人の薬物汚染などの影響もあり
「麻薬」→「中毒」直行認識になってしまっています。
もちろん覚せい剤やらの乱用は大問題ですが
覚せい剤と大麻と医療用モルヒネを同じ「麻薬」と
ひとくくりにしているから無用な混乱と苦痛が生まれるのです。

ちゃんと「医療用麻薬」の啓蒙をしていかないといけません。

0 件のコメント:

コメントを投稿