2010年1月12日火曜日

背中を押してよ

「田舎の往診」とは誠に田園的な響きだが
最近は寄せる時代の波で都市部も地方も抱える問題は同じ。
ほのぼのとした「爺さま婆さまの見回りパトロール」的な
要素が減ってきてハプニングの連続技である。

本日は朝から一軒、飛び入りあり。
数日前に受診した爺さまが昨日から自宅で動けなくなっていると。
「家に行っても何も出来んのだから救急車を呼べ!」
と言うが「とにかくいっぺん来てくれ」の一点張り。
定期往診メンバーの合間を縫ってようやくその家を探し当てて入ってみる。
大きな体の爺さまがなんだか中途半端なベッドに半分落ちかけで寝かされている。
後で聞くと、ベッドが無いので応接間のテーブルに布団とクッションを敷き詰めて
簡易ベッドにしたとの事。婆さまのアイデアである。
婆さまがあれこれ説明してくれるがどうも要領を得ない。
数日前は頭を打って受診したのだが、それとは関係がなさそうだ。
「昨晩から急に歩けなくなった」との事だが
はっきりとした麻痺が来ているようでもなし。
「"中風"のはしりかもしれんから、やっぱり病院に来てもらわんと!」
と私は婆さまに言う。「救急車呼ぶのはかなわんのか!?」
「そんな事はない。このまま家では看られないし
病院で調べてもらって入院させてもらえたらありがたい・・・・」
あれっ??
近所の目を気にして救急車を呼びたがらない家も多いので
それで「往診に来てくれ」だと思ったのだがいやにすんなりと受諾する。
とにかく病院に電話をして病棟の受け入れ確認などを指示。
家人の考え方にもよるが、こういう場合、家で看れない事も無い。
しかしそれには医療とともに介護も足並み揃えての介入が必要で
今はとてもそんな処へ誘導出来ず。婆さまに待機するように言って
私は次の往診先に駆けつける・・・・

私が移動している間に病院と婆さまの連絡がうまく進んで
爺さまは無事、救急車で来院、そのまま入院。
血液データなどから見ると中枢神経の問題ではなく
どうやら肺炎を起こしているようだ・・・
呼吸器の症状でないんだよね・・・・高齢者の肺炎って・・・難しい。
ふーん・・・と思いつつも、始めっから救急車呼んでくれりゃあ、とも思いつつ。
婆さま、「家では無理。入院させて欲しい」と端から言ったんだけどなぁ・・・・
・・・・・
30分くらい考えてはた、と思い当たった。
この家は見るところ、少なくとも3世代同居家庭。
若い世代は昼、仕事に学校に行っている。
実際、爺さまの世話をするのは婆さま一人。
婆さま、簡易ベッドを作るなど機転は効くが
歩けない、動けない、食事取れないの爺さまのお世話は無理。
病院に連れて行って欲しいが、多分、若い世代は「忙しくて」関与しない。
ないしは婆さまが若い世代に遠慮して「連れて行って」と言えない。
かと言って独断で救急車を呼んでは
「婆さん、勝手なマネをするな!」と怒られるかもしれない。
・・・・とにかくお医者さんに往診に来てもらおう!
・・・・そして先生が「入院!救急車呼んで!」と言ってくれたら
堂々と救急車を呼べる!!
・・・・その理由付け、背中押しが欲しかったのかぁ・・・・
分かりやすい構造だよなぁ・・・思いついてしまえば・・・・
まぁ、こういう形の背中押しも私の役割のひとつなのかなぁ・・・・

その爺さま、たまたま、ケアマネ氏がうちのA氏で
後からA氏にいろいろ尋ねて、まあ、この流れで間違いはなかったようだ。
爺さま、いわゆる認知症は重度で
徘徊、介護への抵抗、不潔行為何でもござれの状態だったようだ。
「今までよく家で婆さま一人で世話してきましたよ。
そろそろ限界だと思っていたので介入するいい機会になりました」とA氏。
「それで・・・・退院したら先生に往診に来て欲しいと婆さまが・・・」
さっき入院したばっかだろうが!気が早すぎるよっ!
それにこの爺さま、別のかかりつけ医が居ると聞いたんですが・・・
「"家に来てもらって大層、助かりました。今後もぜひお願いしたい"との事で」
A氏、またまたお客さんが増えましたね・・・とにこにこしている。
おーい・・・段取りがよすぎますよ・・・・
「入院したばかりだから退院のメドが立ってから・・・」
「もちろんですとも」
「家人が病院を変えると言うのならばやむをえないけれど
かかりつけ医さんにも連絡して・・・患者を取ったと思われても後々困るし・・・」
「婆さまにかかりつけ医さんの処に行かせて診療情報提供書もらってきてもらいますよ」
良いように捉えれば頼りにされている
・・・と言うか、利用されている気も・・・するのですが・・・・

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